1500坪もの面積を有する敷地は、自然の豊かさを伝え守るために一定の行為を規制し、指定植物を採ること、さらには元々無かった植物を持ち込むことも原則認められない地域であった。過去山林として高木が群生し国の貴重な資源として近隣や遠方から訪れる人に愛された場所に新たな魅力を生むゲストハウスを、という依頼である。
その恵まれた周辺環境を存分に取り入れることと指定植物の保護。この2種類の要素を結びつける構成が求められた。それは既にここにある、土地が持つある種の空間をそのまま繋げていくような作業であり、この土地が持つ”自然の形”にそっと屋根を掛ける極めてシンプルな構成こそがこの土地の遍歴に加える新たな手だと思う。
建築が環境に溶けていくようにここに在り続け、その貴重な資源を保護し続ける建築。この雄大な敷地内と建築に周囲の保護植物を受け入れ、建築が在り続けることで機能する。そんな因果関係を目指した。
構造は斜面地の土留めを兼ねた主体構造に木造の屋根を掛ける構成。最低限の構造部材でバランス良く地震力を負担することを目指し、耐力壁ではなく接合部の強度を高めた木造ラーメンとしてフレームを構成することで周辺への開放性大きく確保することが可能となった。
この土地の歴を再編することで、規制が多いこの場所における「建築の役割」が再認識されたように思う。
-いなべの家-
建築敷地 : 三重県いなべ市
計画年月 : 2018年9月
工事種別 : 新築
主要用途 : 専用住宅
建物構造 : 混構造
延床面積 : 219.33㎡
Location : Inabe Mie
Completion : September 2018
Construction type : construction
Principal use : House
Structure : RC+timber structure
Floor area : 219.33㎡