三重県菰野町に計画した地域高齢者のための共同住宅。
自然豊かな環境があるこの町には介護を必要とする高齢者が特に多く、単身での生活に不安を抱く人も少なくない。
高齢の家族を持つ夫婦にとっても子育てや仕事をしながらの介護は難しいという。
高齢化社会が進む現代、今一度介護との向き合い方を地域を通して考えたい。この建主の言葉からこれまでこの地域における看護活動の重みと今後さらにこの地域へ尽力する覚悟が感じられた。
高齢者の生きがいになり、高齢の家族をもつ夫婦をもケアをする、心の拠りどころであり老若男女が集まる地域の寄りどころになる。
そんな地域の看護環境を「建築」を通して考えることにした。
木造平屋建ての低層ボリュームで鳥居型の構造体を均等に配置するシンプルな構成とし大梁である「笠木」を支える柱を4つ柱とすることで、個室から外部空間までを内包する3.6mの軒下空間をつくることとした。この軒下に県産材である杉を使用した「木組み」を加えることで建物全体に広がる均質な軒下空間に歪みが生まれ、その組み方の気積によって差異化を図った。
気積を持った軒下が地域に開放され、地域のイベントや近所に住む子供の遊び場となって地域の寄りどころになる。
ここで生まれた「きっかけ」がコミュニティの始まりとなり地域介護に繋がっていく。ここにできたものは「介護施設」ではなく、無意識のうちに「介護」として寄与する「日常」である。